楊智心

YANG Zhixin

江戸中後期の博物図譜における視覚表現
―栗本丹洲の『千虫譜』を中心に―

紙、アクリル、粘土、木板
年表|H1000 × W1900mm
パネル|H500 × W420mm(3枚)
模写|H210 × W150mm(5点)
模型|H210 × W297 × D297mm
論文|H297 × W210mm
図録小冊子|H148 × W210mm

作者より

江戸中後期の短い間で肉筆の博物図譜のブームが存在していた。
それらの博物図譜の中に感じた西洋図鑑と違う視覚情報ではなにが・どこから・どう生み出されたのかを探るために、同時代の肉筆図譜の中で写本がもっとも多い栗本の『千虫譜』を中心に研究し始めた。
博物歴史と栗本の人間関係に基づいて、実物調査と観察実験を行い、生き物の動きと様態を著者の制作姿勢と結びつけ、江戸中後期の肉筆博物図譜の視覚表現の仕組みを解明していく。

楊智心

担当教員より

本論は江戸中後期に数多く記された肉筆による博物図譜、中でも栗本丹洲が記した『千虫譜』に着目し、東洋の博物図譜の魅力とは何かを明らかにしようと試みた研究である。生物を標本化することで細部を網羅的に描こうとする西洋の博物図譜とは異なり、生物が生息する環境とその動態、対象物と観察者との関係などありのままに描こうとする方法を、栗本の人物相関、当時の社会背景と博物学の潮流、『千虫譜』の描画方法とレイアウトパターンの特定などを通じて明らかにした。わずか100年ほどの間で制作された肉筆博物図譜の価値をデザイン史に位置付け直すという点からも、意義のある研究として評価できる。

視覚伝達デザイン学科教授 中野豪雄