岡田好美

OKADA Konomi

Mother

木製パネル、紙、岩絵具、アクリル、コンテ、パステル
H2500 × W4500 × D45mm

作者より

人は生きていく中で、「このまま死ねたら良いのに」と考えることが一度はあると思う。
その想いには、現状がどれほど美しく満たされたものであってもいずれはみな一様に朽ち果てていくのだという虚しさと、その一瞬の中に何もかも委ねてしまいたいというある種の諦観や祈りが存在している。
失われてしまうかつての時、また変化に対する感傷に向かい合い、一枚一枚描き留め貼り合わせていくことで、その祈りは「私」自身へと帰還する。

結局のところ、虚しさも祈りも「私」自身の血肉として吸収して、生きていくしかないのだ。

岡田好美

担当教員より

胎内をイメージしたかのようなドーム型に並べられた巨大なパネルには多数のドローイングが集積、増幅され、コラージュという手法を超えて生成した表面を作りだしている。以前から岡田のドローイングからは絵画の原初性を意識させられて魅力的であった。同時に一枚の平面作品としては絵画の制約を感じさせて課題が残るようにも思えたが、この修了制作では手法もあって絵画の枠から解放されている。
「Mother」という題名は「私を形作るもの」という意味合いを込めているようだが、母親との関係性や自己のコンプレックスなど心理学的な興味を観る側に感じさせる。
作品を通して自己と他者や世界に向き合い、格闘することから生み出された抵抗感がこの作品を支えている。

日本画学科教授 尾長良範