キョ ムライ

XU Menglei

漢語表記による造本と版面造形について
—南宋刊本を中心に—

論文|H257 × W364mm(140ページ 51,282字)
小冊子|H148 × W210mm(28ページ)
資料|H210 × W297mm、H297 × W420mm、ほか7点
年表|H1682 × W3567mm

作者より

本研究は中国での⾦属活字が伝来される以前、漢語で記録されたものの姿を探ることにより、漢語表記の美しさとオリジナリティを発⾒するための研究である。そのため、⻑い歴史を探り、甲骨・⻘銅器・⽵簡・紙など⾊々な素材と造本様式に渡り、漢語表記の書体と版⾯造形の変遷を明らかにしたいと考えている。その中に、漢語表記の美しさを最も表せる南宋刊本に注⽬し、特にその中の「書棚本」について、分析調査を⾏った。それらの研究に基づき、書体デザインや表記システムの開発にも向かっている。

キョ ムライ

担当教員より

キョの修士論文にはタイポグラフィにおける研究において、およそ考えられる研究領域のほぼ全てが網羅されている。書体史、書物史、印刷史、技術史、道具史、書物の形態と素材史、文学史、情報史……。それらすべてを学び、あらゆる角度から書物を分析・調査した結果がキョの修論の主軸である。テーマとなったのは「南宋刊本」。オフセットでもなく、活字版でもなく木版印刷の中にキョが見出した「美」の本質とは。「南宋刊本」に印された文字形象の分析、文字組版の空間の分析、版面造形の分析に至っては、時代の前後左右の変遷と差異、そして西洋の分析方法から、中国の古典的計測単位「度量衡」を元にした分析など、従来にはなかった分析方法が用いられ読み解かれる。研究はさらに進む。「南宋刊本」に印された刊本書体のデジタルによる新解釈による復刻と、そのスペーシング……。キョの研究と実践は、実のところ始まったばかりなのだ。

視覚伝達デザイン学科教授 白井敬尚