テイ シン

CHENG Zhen

時代がもたらした図像-元青花の文様における視覚文化の探究-

論文|157ページ 63232字
パネル|各H297 × W420mm ×2点
年表|H1600 × W3000mm

作者より

私は中国の歴代の陶磁器の中で、元の青花文様が最も広い意味があることに注目した。つまり、多元的な社会背景に誕生した元の青花磁器の文様は統一的な図像プロセスを示している。そしてすべての元青花の裏側に潜んでいる文化的な要素は文様において豊かでかつ多様な姿を現わしている。故に、私は元の青花磁器を具体的な研究対象にして「元青花の独特な図像がどのような意識のもとに構成されたのか」という課題を修士コースにおけるテーマにし、研究と分析を行なった。
修士課程の論文で先行研究を参考にしながら元青花文様の視覚言語と意味性を解析した。要するに、文様を単に形態の考察だけではなく、当時の社会における文化、メディア史、宗教、思想、全体の影響関係の中で、なぜその図像が成立したのかということをより立体的な視点から見ている。また関連する考古学、歴史、文献と図像資料を収集して総合的に研究し、元の文化、宗教、礼儀と美意識におけるそれらの図像の意味を解釈している。

テイ シン

担当教員より

本論文は中国陶磁史の全体像を可視化した年表および図像の視覚言語的研究を基礎としてなされた。彼女は中国陶磁史の中でも、元の青花文様が最も多様な意味を孕んでいることに
着目し「元青花の図像がどのような意識のもとに構成されたのか」を論文のテーマとしている。そこに描かれた多様な図像そのものの意味解読、背景となる当時の社会文化、メディ
アの状況、宗教、思想、それら全体の影響関係の中で、その図像が成立した根拠を探る論述を行った。このことを通して彼女は元青花の図像がどのような文脈で描き出されたかを浮かび上がらせ、普段私たちが何気なく見ている文様に潜む豊かなドラマと美を提示することに成功している。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策