安藤由莉

ANDO Yuri

SERENITY PRAYER

Open your eyes
entrance_1
entrance_4
entrance_5
entrance_7
from station
entrance_10
In front of the alley
2つの植木鉢、アルミ製
エレベーター、アーモンド・サン
grape pattern iron gate
パックドローイング

キャンバス、綿布、麻布、油絵具、スプレー、木炭、真空パック袋(ポリエチレン)、ほか
H3000 × W9000 × D10800mm(展示空間全体)
H500 × W652mm
H455 × W530mm
H410 × W530mm
H410 × W530mm
H410 × W530mm
H1303 × W970mm
H455 × W530mm
H380 × W455mm
H1303 × W1620mm
H2590 × W1940mm
H1303 × W894mm
各H297 × W210mm(11点)

作者より

制作の出発点とするのは、路地、住宅の玄関、フェンス、レンガの外壁、街路樹など街を中心とした身の周りの風景です。取り扱うモチーフは個人の思い入れや、滞在した時間と関係なく、一つの存在した事実として画面上に取り入れています。それは画面上で存在したそれぞれの記憶を再体験する為に行っています。
画面上で取り扱うモチーフは、具体的なものと曖昧な輪郭なものがあり、時に抽象化して画面上に取り入れています。それは、同じ記憶という概念の中で互いに行き来出来るような存在でありたいと思うからです。物事の捉え方には様々な側面があり、存在する事実として受け入れられるゆるさを画面上で表現することを中心に制作しています。

安藤由莉

担当教員より

安藤由莉は、日常で目にした風景や出会った物事をきっかけにして絵を描いている。それらのモチーフは、彼女の記憶として具象と抽象を織り交ぜた色と形に置き換えられ画面上に再構成される。キャンバスや綿布などの支持体に、油絵具、スプレー、木炭などの描画材料によって描かれるが、形のはっきりしたものもあればぼやけているものもあり、色も固有色だったりモノトーンだったり、ものの位置関係やスケールが曖昧だったりと様々で、それらが複雑に絡み合うことでさらに違った形や色が生まれて新たな風景が立ち現れてくる。
そういったやり取りを追体験することで、安藤が感じたリアルは伝わってくるのだが、中でもふんわりと頼りなく定着されたスプレーの質は、彼女が世界に触れた瞬間の手触りのように感じる。「実際に見たものに対しての思い入れや時間に関係なく、存在した事実として画面に記録したい」という安藤は、描くことによって自分も確かに存在しているということを感じようとしているのではないだろうか。
修了制作では、10号から200号までの絵画11点とドローイング11点を2校舎のひと部屋に展示し、それぞれの絵にはタイトルを付けず部屋全体として「SERENITY PRAYER(平静の祈り)」というタイトルを付けた。2校舎には流し台や大型の換気扇、壁面に出っ張った柱などがあり、絵を展示するのにはやりにくい場所だと思うが、安藤はあえてこの場所を選び、絵と空間との関わりや絵をどう見せれば表現したいことが的確に伝わるのかということについて積極的に考えていった。最終的に絵は全て壁面に掛け、絵を絵として見せるという展示を選んだ。作品の数や並びの順番など、可能性を検討する余地はまだあると思うが、1点1点の完成度が高い安藤の絵にはそれが合っていると感じた。

油絵学科教授 小林孝亘