KIMUKIMU(木村大祐)

KIMURA Daisuke

somewhere over the rainbow

インスタレーション|ハーネミューレ紙、雁皮紙、銅版、油性インク、流木、ストッキング、エッチング、アクアチント、ほか
サイズ可変

作者より

今回、「オズの魔法使い」をモチーフに制作をしました。
「オズの魔法使い」は、LGBTQの方達にとってとても大切な物語でドロシー役のジュディ・ガーランドが歌う「over the rainbow」は、LGBTQのシンボルが虹になる影響を与えたとも言われています。
ドロシーと旅をする、カカシ、ブリキの木こり、ライオンの3人は風変わりなのですが、ドロシーは「クィア(風変わり)でも関係ない、私のお友達だもの」と胸を張って答えています。LGBTQの方達はそんなドロシーの優しさに共感しました。
「over the rainbow」の歌の中で、心配性のドロシーは虹を越えたところに心配しなくてもいい場所があると歌っていて、僕も誰もが自由に生きられる場所を想いながら制作をしているのでドロシーの歌に共感し、ドロシーのお友達でもあるので今回、モチーフに「オズの魔法使い」を選びました。

KIMUKIMU(木村大祐)

担当教員より

虹の彼方に拡がる理想の風景を、銅版画によるインスタレーションで体現した。「オズの魔法使い」の劇中歌をタイトルに冠し、作者自身が抱いてきたすべての困難を乗り越えるための深い思索の庭となっている。「somewhere over the rainbow」で登場する大小さまざまな銅版画や流木は、どれもみんな角が落とされ、丸みを帯びている。世の中のすべての摩擦や軋轢を削り落とすこと。それは作者にとっては、生きる営みの本質でもある。銅版にやすりをかける、という彼自身の作為はもちろん、長い時間をかけて水流に揉まれながら、木が摩耗していくような抗えない自然の循環を常に意識しつづけることもまた、ものをつくりつづける人生の彩(いろどり)となるのだ。

油絵学科教授 高浜利也