田中智美

TANAKA Tomomi

HAN

Hvis

陶土、紐作り
H970 × W300 × D290mm
H250 × W400 × D180mm

作者より

私は作品の「底面」をなくしたかった。
しかし、重力のあるこの地球でそれを実現することはとても難しい。
転がして、焼いて、また粘土を付け足して。
そうして私の作品は捉えどころのない形に変化していった。

田中智美

担当教員より

極彩色の生き物は死ぬと色が抜けてしまう。鮮やかな色を感じるのは生きている時だけだろう。「色彩を存在させること」は、「不死の方法」であると考えると結構ラディカルなアプローチかもしれない。いずれにせよ、生き物には人間の感覚を超えた仕組みがあるということはまちがいないだろう。田中の作品の持つ「美しさ」はこのような、見る者の感覚を裏切る視点に満ちている。そもそもこれらの作品は今見ている状態を最初からイメージして作られたのだろうか。それとも最終的に見出された状態なのだろうか。「底面を作らない」という田中の方法は、天と地、構造と装飾、主役と脇役の関係を反故にして、見る者の身体感覚を揺さぶる。作業としては土の輪積みという最もシンプルな方法だが、田中の表現はそれを様々な視点で読み解く時間の集積から生まれている。土が焼成され、破棄され、放置されたものが辿ってきた時間。そんな時間と対峙することが田中の作法だろう。田中の色彩は、ものが生成する時間が逆回転するような浮遊感とともにある。

彫刻学科教授 伊藤誠