トウ ウタン

DENG Yudan

水月観音菩薩の尊格形成と初期図像に関する一考察
—中国における13世紀までの在銘作品を中心に—

論文|42ページ(30,325字)

作者より

本論文では、13世紀までの水月観音の在銘作品を取り上げ、水月観音を定義づけるという基礎的な作業を出発点にして考察を進めたい。また、文献と作品を併せて図像学的背景を考察した上で、水月観音の性格について再考を行う。さらに、緻密な図像学的手法により、様々な角度から水月観音図を構成する種々の図像要素を一つずつ総合的に分析して、水月観音の図像的な特徴、並びにその図像の変遷を深く考察した。

トウ ウタン

担当教員より

本論文は、未だ定説をみないいわゆる水月観音の尊名と尊格の形成を文献学的に考察し、また尊名を有する13世紀までの現存作例を用いた図像学的分析を通じて、狭義の水月観音の定義とその図像の規定を明らかにすることに成功している。特に、「水月」の起源と展開を試みたこと、変化観音の発展形としての観音菩薩の別称であること、そして現存作例に表される諸図像を実証的に分析したことなどが注目される。今後、より深くかつ幅広く考察することで、本論文の諸説は学界に広く影響を与える優れた学説になりうるであろう。

美学美術史研究室教授 朴亨國