ジョ エキボン

XU Yifan

降三世明王像の成立と造形表現に関する考察
—西安碑林博物館蔵像を中心に—

論文|49ページ(28,241字)

作者より

本論は西安碑林博物館所蔵降三世明王像を対象にして、唐代中期密教の一部を解明する一助となることを目的としている。降三世明王は、三毒(貪・瞋・癡の三煩悩)と三世の主を自称する大自在天(=ヒンドゥー教のシヴァ)を降伏させる。足下に大自在天とその妃烏摩を踏み付けているのが図像学的特徴である。降三世明王像の造形は、一面二臂、一面四臂、三面八臂、四面八臂などがある。本論の対象であり、1959年7月に中国・西安市東北部で発見された降三世明王像は、優れた彫刻技法で正しく隆盛な唐代中期密教の様子が反映されており、厳密に経典に従い制作されたと認められている。

ジョ エキボン

担当教員より

本論文は、中国の西安碑林博物館所蔵石造降三世明王像を主な研究対象として、教理学的・図像学的な分析・考察を行い、降三世明王の尊格と図像の成立過程の一部を明らかにすることに成功している。降三世明王像は、日本以外においては十数例しか現存していないため、その尊格の形成や図像の成立と展開に関する直接的な論文が皆無に近い現状において、現存作例を網羅的に分析・考察したこと、また西安碑林像を詳細に分析し、西安碑林像が八臂像の中では東アジアで最も古様の図像を有することを明らかにした点は高く評価できる。

美学美術史研究室教授 朴亨國