リュウ ショウコ

LIU Chengzi

マルチ映像の本質的可能性を探る
—ポール・ドリエッセン作品の記号的分析を中心に—

紙、液晶ディスプレイ
論文|116ページ(47,000字)
映像|10分00秒
パネル|H1000 × W3000mm

作者より

今まで「マルチ映像」は環境映像、技術として語られることは多いが、本研究が注目しているのはマルチ映像の叙事的な機能である。適切な視覚誘導があれば、マルチ映像はそれぞれの画面で物語を提示し、そして画面と画面の位置関係によって新たなメッセージを提示できる。時間的モンタージュと平面的モンタージュが新たな意味性を織り出す。本研究は、マルチ映像の源流を触れてから、ポール・ドリエッセンの作品を中心に記号分析と実験を行い、マルチ映像の本質的可能性を探究する。

リュウ ショウコ

担当教員より

自らが一つの映像作品に複数の異なる画面またはスクリーンを使う形式の「マルチ映像」アニメーション作家である作者は、マルチ映像とはそもそも何か、絵画表現から映画、アニメーション、漫画、デジタル映像におよぶ多様な現象と歴史的経緯、先行する批評や理論の分析から本研究を始めた。博覧会、テレビ中継など、マルチ映像は私たちの日常生活に多数存在しており、デバイス技術などの拡張から今後さらに増大してゆくだろう。それらは主として環境映像技術として語られることが多いが、本研究が注目しているのはマルチ映像の叙事的な機能とその可能性である。彼女はその先駆的表現者でありその叙事機能を最も進化させている作家ポール· ドリエッセンの作品を中心に記号分析と鑑賞実験を行うことでマルチ映像の本質的特徴を明らかにしようと試みている。さらに『氷山を見た少年』の詳細な解釈によって、最終的にマルチ映像ならではの本質的可能性を見出している。研究の全てのプロセスにおいて大変突出した成果が見られ「マルチ映像」の叙事的機能に対する可能性に関するこれまでにない画期的な論考となった。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策