チョウ インメイ

ZHANG Yunming

漢字の成り立ちから見た中国女性文化史


論文|75ページ(55,790字)
ポスター|各H420 × W297mm(16点)

作者より

男尊女卑社会から脱し始まった今の中国において、女性文化は漢字が生まれた時代から激変したが、数千年に及んで根付いていた伝統がまだ残っている。女性の前進が伝統的ジェンダー観に阻まれていることの起源を、中国の先史から原史時代の社会像を凝縮した漢字の成り立ちに求めたい。
本研究はアブダクションを中心にする研究方法を用いて、女性に関する漢字の発生を字源研究だけに求めるのではなく、社会学的、民俗学的に解明を深め、考古学的な観点で女性文化の歴史を探った。

チョウ インメイ

担当教員より

作者は説文解字以降の漢字学、特に今日かなりの速度で進化しつつある最新の漢字学を緻密に参照しつつ、C.S.パースによるアブダクションを用いて、女性に関する漢字の発生と変化の意味を字源解釈だけに求めるのではなく、社会学的、民俗学的、考古学的な観点を含めて読み取ろうと試みた。具体的には「女、母、夫、奴、育、孕、包、娩、乳、好、保、孟、如、訊、姓、妻、婚、娶、始、胎、巳、媧、咼、骨、蛙」の25の文字の原初形態から時代を経ての微細な変形・差異を抽出、それに対する古今の意味解釈を調べ比較している。それらの先行研究を前提に当時の器物や彫刻などを参照しながら、彼女独自の推論を加え、古代の母系社会が男系社会に移行する中での女性の意味のダイナミックな変遷が浮かび上がる。大変優れた論考である。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策