水路
Watercourse
実
Fruit
川の石
Stones in the river
切り株
Stump
地割れ
Fissure
水中の石
Stone in water
沈む石
Sinking stone
川
River
地上に落とされた
Fell on the earth
きゅうり
Cucumber
キャンバス、油絵具、アクリル絵具、紙、水性ペン、コンクリートブロック、枝、石、金属部品、バネ、ガラス瓶、竹、木、板、鉄パイプ、シュロ縄、ビニール紐、錘、石粉粘土、筵、水晶、香、水、塩、砂、石鹸水、紙箱、木箱、アクリルケース、プラスチック製キャップ、プラスチックトレー、簾、物干し台
H1620 × W2273mm、H1940 × W1940mm、H1120 × W1455mm、H1303 × W1620mm、H380 × W455mm、H910 × W1167mm、H652 × W910mm、H606 × W910mm、H220 × W273mm、H140 × W180mm(2点)、H220 × W273mm(2点)、H242 × W333mm
作者より
上流から草が流れてくる
茂った草は刈り取られ、水に落ちたものはこの流れに身を委ねるほかはない
下流には2本の杭がある
流れてきた草はそこへ引っかかり留まるか
そのまますり抜けて流れて行く
流れてきては堆積していく草は次第に層を成し、
水のちからに従って静かに揺れ動いている
どこからともなくやって来て、またどこかへ去っていく
ここはその途中 それもほんの束の間のことだろう
明日はわからない
私はただそれを見つめている
佐伯瑠美
担当教員より
佐伯瑠美は、自宅の周辺や通学の途中など、日常で目にしたものの中で特に心に留まったものを題材にして絵を描いてきた。修了制作では、用水路の杭に引っ掛かった草や水面から少しだけ出ている石、切り株や桃の断面、胡瓜等がモチーフになった。
グレートーンの渋い色調とシンプルな形で丹念に描かれた画面は、表情などを細かく描き込んではいないが、絵が単調にならぬように画面の中での形や筆触、形が接する際の処理には十分な配慮がなされている。一点一点の絵を観ていると、彼女がじっくり絵と向き合った時間が積み重なっているように感じる。
用水路の杭に草が引っかかっている様を描いた「水路」は、実際には引っかかった草だけではなく、引っかからずに流されていった草もあったという。当初、佐伯はそれらを対比させて描こうとしていたが、描き進めて要素を絞り込んでいくうちに引っかかっている草だけになった。作品の右下に、ほぼ直角に折れ曲がった木の枝と、同じように折れ曲がったスプリングがそれぞれ小瓶に入れられてブロックの上に置かれている。これらは絵と対をなすもので、絵と呼応するように偶然集まってきたものだという。佐伯の作品には、他にもそういったものがあり、展示だけをみるとインスタレーション的な表現に向かうのかと思わせるが、佐伯は形式としてそういった展示をしているわけではなく、やらなくてはならない必然のこととしてやっているのだと感じる。それはまだ彼女にとっては実験的な試みだと思うが、自身の直感を信じてやりたいことやり切った潔さを感じた。
油絵学科教授 小林孝亘