ウ ベカク

YU Beige

地図が語る世界認識 —唐~明における地図製作者と視覚要素の変遷を中心に—

論文|145ページ(38,039字)
年表|H1650 × W5500mm

作者より

本研究では、各時代の時代変遷、政治文化、経済状況、自然環境、技術革新などの背景に合わせて、地図そのものと地図製作者の関係を辿って、地図が現れた世界像を探査した。また、宋から明における地図が表す視覚要素を全体的、部分的に比較分析することによって、地図間の影響関係より明確に考察し、新たな視点や可能性を提供するを試みた。地図における視覚言語の特徴と変遷より統べ、地図作りの背後に隠された世界認識をより明確化された。

ウ ベカク

担当教員より

本研究は、メルカトル図法に画一化される以前の古代中国(唐代~明代)の豊かな地図表現はどのようにして生まれたのかを考察したものである。各時代の政治、文化、経済、自然環境、技術革新と照らし合わせながら、地図製作者の足跡を中心にそこで描かれた世界像を読み解いていった。地図製作者の師弟関係によって継承されたものや、文献や既存の地図を参照して描かれたもの、目的に応じて部分的に書き換え、都度新たな地図記号が追加されているもの、地理的な正確性よりも民族や宗教などのイデオロギーの表象を重視したものなど、収集した地図の分析を通じて豊かな視覚言語が成立する背景を明らかにしている。また、各時代の地図に描かれた視覚要素(山、川、湖、万里の長城など)を抽出し、比較することによって、地図間の影響関係の新たな視点の提示を試みている。膨大な資料を読み解いた上で自身の仮説にまで繋げていく論者の思考力や分析力は大変優れたものであり、地図学で扱われることが多いこの分野を視覚伝達デザインの観点から捉え直し、古代中国の世界像を明らかにした非常に価値のある研究として評価できる。

視覚伝達デザイン学科教授 中野豪雄