松永恵実

MATSUNAGA Emi

五星を中心とした星曼荼羅の図像分析

論文|99ページ(51,148字)

作者より

五星とは、太陽系の惑星である土星・木星・火星・金星・水星のことであり、肉眼で観測できることから、古代より天文学・占星術の観点で重要視されてきた。筆者は、除災・延命・増益祈願の修法の本尊である北斗曼荼羅において、北斗七星・九曜・十二宮・二十八宿などの星宿が神格化された様子に魅力を感じ、研究を始めた。修士論文では、中国の五行説が五星(九曜の一部)の図像成立に関わっていることに焦点を当て、分析を行った。

松永恵実

担当教員より

提出された修士論文は、星の図像というインド・中国さらには西方世界にも及ぶ多種の文化における世界認識を反映した表象を研究テーマとし、従来いわれているようにインド系と中国系に図像の系統が截然と分れるのではなく、インド・中国双方の要素が混在する状況にあることを提示しようとしたものである。図像分析を行う手順は周到で、対象を丁寧に観察し、丁寧に記述することにより論文を完成度の高いものとしている。知見のうち、熾盛光仏と五星が天子と臣下のイメージと重ね合わされているという指摘、また金曜・水曜を女神像として表すことの理由の推測などは今後の研究の進展が期待される成果といえる。この度の優秀賞受賞を励みにして、真摯に研究に取り組んでいくことを期待したい。

美学美術史研究室教授 故朴亨國指導教授代行 玉蟲敏子