hellowakana(林和奏)

hellowakana(HAYASHI Wakana)

trap#12

trap#13

trap#14

アルミ、木、セメント、竹、ニス、石粉粘土、レザー、ビーズ、ファー、 画鋲、釘、石、ステンレス、布、綿、鉄、草枝、糸、ほか
H1030 × W2340 × D2340mm、サイズ可変、H500 × W650 × D150mm

作者より

忘れるべきでない自身の純粋な感覚を、新鮮なまま残す・再起させる為に「自分を捕まえる罠」を仕掛け幼い自分を誘き寄せる事をしています。
自身が生まれ暮らしてきた環境=「住」に含まれる内装装飾(手に取るような必要のある道具から必要性を問う様な遊び道具まで)を意識し寄り添う事で、愛のある罠を仕掛けます。

hellowakana(林和奏)

担当教員より

吟味された多種多様な素材をそれらに最も相応しい手法で紡ぐようにつくられた作品は林自身のtrap(罠)であるという。「trap#13」では幼女の頃、家の台所と母を見上げている記憶を見える範囲を印象化し再構築を行い出現させている。コンクリートに小石を散りばめた洗い出しの手法でつくられたシンクの一部は台所の収納家具をモチーフにした柱状の形態の上に設えられている。その横手には3メートル以上の高さから様々な端切れを素材に三つ編みにされたロープが吊り下がっている、その先端にはタッセルがある。実際の台所のサイズを想定すると、作者の身長は4~50センチくらいになるのだろうか。まだ歩行もおぼつかない乳児時代の林の姿がここに居る。そして抱きかかえられ母親のエプロンの図柄と三つ編みの髪が眼前で揺れているのだ。これらは林自身の記憶で最も古いものに分類されるであるのだろう。その曖昧さゆえに、素材を紡ぐ行為と記憶を紡ぎ思考する事が同義のものとして進行していく。
記憶と想像という新たな実在理念に裏付けされた彼女の世界がそこに展開されている。そして、その世界の端に立ち、作品を紐解いていくと私たちも「trap#12」にまんまとハマっていくのだ。「実家に猫よけのフェンスを入念に設えた。その一方で私は猫が遊びに来てくれることを密かに期待していた。」と。様々な予測と解釈を許容する作品である。

彫刻学科教授 三沢厚彦