寺内大登

TERAUCHI Hiroto

目をつぶると見えなくなるもの
invisible when close

無題(目をつぶると見えなくなるもの/紙、青、木炭)|oil on circle|wax on paper|oil and charcoal on green|paper on paper|wax and paper on paper|color label on circle|無題(目をつぶると見えなくなるもの/紙、みどり、蝋)
untitled(invisible when close eyes/paper、blue、charcoal)|oil on circle|wax on paper|oil and charcoal on green|paper on paper|wax and paper on paper|color label on circle|untitled(invisible when close eyes/paper、green、wax)

紙、キャンバス、油絵具、アクリル絵具、木炭、蜜蝋、ほか
H1580 × W1300mm(2点)、H210 × W297mm(13点)、H420 × W297mm(4点)ほか7点

作者より

例えば「この部屋」と「この部屋の図」の関係は、「この部屋の図」はまるで「この部屋」でない状態でそのことを言う。 その様に像を認識し図とみることに対して、していることとしていないこと、その表れや由縁、感覚的反応、キャンバスと筆先が触れ合ったり離れたりするような、今現在の営みは「距離を図る」様に可視化されるだろう。 絵画の「図像」と「距離」の二重構造は解体することで「図を組む=距離が図る」ことが明確にリンクし現在進行形の絵である実感が在ることがわかる。

寺内大登

担当教員より

取るに足りない小さきもの。寺内の作品には「これで絵になっているのか」と疑われるようなあっけないものもある。学部生時代からドローイングをもとに地道に抽象絵画を展開させてきた寺内は、徐々に最小限の要素で成立するさらに際どい絵画を求めるようになっていったのだろう。つまりこう言ってよければ「絵画の本当の豊かさ」なるものを。貧弱な支持体に物質性を求め、ナンセンスなルールを用い、恣意的なものをギリギリまで排除しながら、寺内の制作は研ぎ澄まされたというよりどこかユーモラスで遊戯的である。
大学院の修了制作展という派手なプレゼンテーションを求められる場に、明らかにそぐわない取るに足りない小さき作品たち。そこで寺内は自分の世界に立て篭もるという安全策を捨て、常軌を逸した巨大な壁による特殊な空間に、寄る辺ない小さきものらを解放した。その場所がつくり出す奇妙な違和は、絵画が絵画の中に留まりながら現実空間へ勝手に流れ出す、「オートマチックな解放」とも言うべき新しい豊かさへの提案である。

油絵学科教授 袴田京太朗