シュウ ドウ

作者より

見渡す限りの草原、遠くに山が見えるだけで何もない土地。
空が近くに感じる。その雄大な内モンゴルの自然の中にポツンと存在する移動式テント——ゲル。

朝は太陽が昇るころに起き、馬と牛を集めて搾乳、ヤギの放牧をし、タイミングを見て水汲みに行く。遅めの朝食を食べてからはのんびり過ごし、馬乳酒を混ぜる作業をし、日没を迎えたら就寝準備をする。
自然の流れに逆らうことなく、のんびり暮らしてきた牧畜民たち。

彼らがいま、直面しているのは、深刻な水問題である。

シュウ ドウ

担当教員より

本研究は、中国・内モンゴル自治区の牧畜民が使う、空気から飲料水を作る装置のデザイン開発の提案である。1年次は、牧畜民の家庭で生活体験を行い、エスノグラフィー調査で得た観察データとその精緻な分析は、大変評価できる内容であった。2年次では、水をつくる方法の検討と実験装置の製作および、検証を行い、現地で使用するための要件を明確に呈示したプロセスも秀逸であった。装置のデザインにおいては、機構を分かりやすく伝える造形表現を実践し、ソーシャルデザインとして、いくつもの価値ある成果を得た研究内容であった。　　　　

工芸工業デザイン学科教授　中原俊三郎