高橋美紗貴

TAKAHASHI Misaki

Pale chamber

Still life

Still…

Heart

Griffith flaw

As one

Nothing stays

Even if I can’t go anywhere

パネル、白亜地、油絵具
H1950 × W1310mm
H1130 × W2240mm
H1120 × W1620mm
H1160 × W1160mm
H333 × W530mm
H575 × W288mm
H567 × W422mm
H198 × W267mm

作者より

私はこれまで、傷や欠けを持つもの、本来の役割を失ったものとして静物を描いてきた。
そうしたものたちは私たちの日々に溶け込み、沈黙を抱えたまま、何事もないように在り続ける。その姿は空虚さを孕みながらも、ごく自然な日常の一部でもある。

対象を描くとき、すべてのものが個々に特有の冷たさを持っていることに気付く。その冷たさは対象との近づけない距離を確かめるものであり、そのものを守る結界のようでもある。対象が静かに在るための場所を画面の中につくりながら、それらがどこまで軽やかに在ることができるのか、その可能性を探っている。

高橋美紗貴

担当教員より

高橋美紗貴は一貫して写実表現を追求してきたが、これまでに選んできたモチーフは、壊れた細部があり本来の機能を停止したものばかりであった。高橋は「役割を終えた物の軽やかさを描きたかった」と語るが、それは福島県出身であり、少女時代に被災の記憶を刻印されたことと無関係ではないだろう。
そんな高橋が修了制作に臨むにあたり、身体を横たえた男性美術モデルを描くことにしたのは、どんな心境の変化があったのだろう。写真の援用を退け、徹底して肉眼にこだわった制作のストイックさは変わらない。本作は息づく対象に臨む日々を重ねた成果であり、血の通う身体を敢えて硬質に描ききった大作である。
タイトルの《Still life》は「静物画」を意味し、絵の内容とのくい違いを感じさせるが、その語源は、ゲルマン語系の「stilleven」に由来する。「動かない生命」…つまり静止した自然物や人工物を描くことを指し、高橋の絵画は在り方として、静的な時間の堆積を求めてきたことが分かる。今後、動的な生命感を絵画に与えるようになっていくのかは分からないが、その技術と洞察の深化はあきらかで、優秀賞に推された。

油絵学科教授 諏訪敦