ムラカミナナミ

MURAKAMI Nanami

わいえすしーつーつー
Ysc22

木材 カラーシーチング
H100 × W148mm、H970 × W1303mm、H380 × W455mm、H200 × W296mm、H1680 × W2500mm

作者より

色付きの布をメディウムとして張り重ねることで絵を描くことをした。扱う布は薄く透け、重ねた色が表面の布の色へ影響する。大きな絵の緑のストライプは無地の布、帯状のミントグリーンの布、無地の布の3枚が重なって表面ができている。粒子である絵具から繊維である布へメディウムの置き換えを行う。重なりで表面が作られていくという点においてふたつの物質はそれほど遠い関係ではないと考える。
布を重ねただけで絵を作る。それは一見、「描くこと」「絵」であることへ懐疑的な問いをはらんでいるようである。しかし、身近な素材が描くメディウムになることや作ること、在り方が道草的に行われ「美術」と言われるものの枠組みを柔らかくすることの側面を強く持ちたいと考えている。その上で描くこと、絵であることとはなんだろうか改めて考えるための実験を行っている。

ムラカミナナミ

担当教員より

「筆と絵の具を使わずに絵画を制作すること」という問いを設定したらどのように絵画を創りだすだろうか。ムラカミナナミは木枠にカラーシーチングを張ることで、その問題を解いてみせた。木枠に無地の布を張ることだけを見れば、ブリンキー・パレルモの布絵画(Stoffbilder [cloth pictures])を想起する人も少なくないかも知れない。しかしパレルモは無地の布を使うことでオブジェクトとしての絵画の物質的な側面を強調し、その後の展開として作品の置かれる空間や建築へと関心が向かったのに対して、ムラカミは数枚のカラーシーチングを重ねながらその透過性を利用し、色彩の変化を作りだし光に満ちた絵画を創りだしている。それは絵の具を重色しているようでもある。同じ無地の布を使いながらもパレルモは時に色のついた布を縫い合わせ色面の対比を扱うことはあっても、薄い布を重ね色彩によるイリュージョンを増幅させるようなことはしなかった。二人共に絵画形式をラディカルに変容させながらもパレルモは作品を外部空間へと接続し、ムラカミの関心は画面内の空間に向けられているようである。まだ若いムラカミに対しパレルモを引き合いに出して語るのは、早急かも知れない。しかしそれだけのポテンシャルを持つ若い才能として彼女の今後の展開に注目したい。

油絵学科教授 丸山直文